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解説

最低賃金は2026年にいくら上がるのか — そして「壁」は週20時間へ移る

公開 更新 出典 8件(記事末尾)

毎年秋、最低賃金が改定されます。時給で働く人にとってこれは「同じ時間だけ働いても年収が上がる」 ということです。喜ばしい話であると同時に、年収の金額で線を引く制度と組み合わさると、働く時間を減らさないと基準を越えてしまうという別の問題を生みます。 2026年は、その基準そのものが動く年でもあります。

要点

  • 令和7年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,121円(改定前1,055円・引上げ額66円)で確定済み
  • 令和8年度は全47都道府県の答申が出そろい(厚生労働省とりまとめ 2026年9月4日)。 全国加重平均は1,177円(引上げ額56円・47都道府県で54〜65円)
  • 発効は2026年10月1日から12月2日まで都道府県ごとに分散(予定)。 都道府県労働局長の決定・官報公示前の額で、異議の申出の状況等により変更の可能性あり
  • 2026年10月1日に賃金要件(月8.8万円)が撤廃され、51人以上の勤務先では判定軸が週20時間に一本化される

令和7年度は確定、令和8年度は答申が出そろった(官報公示前)

地域別最低賃金は都道府県ごとに決まります。令和7年度の改定はすでに終わっており、 厚生労働省の「令和7年度地域別最低賃金全国一覧」に47都道府県の時間額と発効日が掲載されています。 全国加重平均は1,121円(改定前1,055円)、引上げ額は66円、引上げ率は6.3%でした。 発効日は都道府県によって異なり、令和7年10月1日から令和8年3月31日まで分散しています。

令和8年度は、令和8年7月28日の中央最低賃金審議会で改定額の「目安」(Aランク54円・Bランク56円・Cランク56円)が 答申されたのち、各都道府県の地方最低賃金審議会が審議し、2026年9月4日までに47都道府県すべての答申が出そろいました。厚生労働省のとりまとめでは、全国加重平均は1,177円 (改定前1,121円・引上げ額56円)、引上げ額は47都道府県で54円から65円です。 目安どおりの県が14、目安を上回った県が33で、目安を下回った県はありませんでした(最大は佐賀の+9円)。

もう一つ見落としやすいのが発効日です。東京・大阪・北海道など15都道府県は2026年10月1日ですが、 青森は10月29日、京都は11月16日、沖縄は12月2日というように、都道府県ごとに10月1日から12月2日まで分散しています。 「10月1日から全国一斉に上がる」わけではないので、自分の都道府県の発効予定日を確認してください。

未確定・注意

答申額はまだ確定額ではありません。答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経たうえで、 都道府県労働局長の決定により発効します。厚生労働省の別紙にも 「発効日は、答申公示後の異議の申出の状況等により変更となる可能性有」と注記されています。 当サイトの計算機では、令和8年度の額を「答申額(官報公示前)」として扱い、確定値と区別して表示しています。

「106万円の壁」は消え、「週20時間」が残る

同じ2026年に、パート・アルバイトの社会保険の入り口も変わります。 短時間労働者が勤務先の厚生年金・健康保険に加入する要件のうち、賃金要件(月額8.8万円)が2026年10月1日に撤廃される予定です(撤廃日を定める政令は本稿の時点では未公布)。 撤廃後も残るのは週の所定労働時間20時間以上という要件で、 「年収を106万円未満に抑える」という調整は、要件そのものの消滅により意味を失います。

この撤廃には最低賃金が深く関わっています。日本年金機構の適用要件のページには、 最低賃金以上で週20時間以上働く場合は所定内賃金が月額8.8万円以上となるため、 この要件は令和8年10月に撤廃予定である旨が記載されています。 つまり、最低賃金が上がった結果として賃金要件が実質的に機能しなくなり、 金額の基準が時間の基準に吸収された、という順序です。

ただし、勤務先の規模によって話が変わる

判定軸が週20時間へ移るのは、厚生年金の被保険者数が51人以上の勤務先です。 企業規模要件の撤廃は令和9年(2027年)10月1日から令和17年(2035年)10月1日までの間に 段階的に進む予定で、第1段は2027年10月から36人以上です。 50人以下の勤務先で働いている場合、当面は勤務先の社会保険への加入対象にならず、 代わりに健康保険の被扶養者認定の年間収入基準(130万円)が判断の軸として残ります。 こちらは撤廃の対象ではありません(別記事「130万円の壁は残る」で整理しています)。

最低賃金が上がると、働ける時間が短くなる

年間収入の基準は金額で固定されています。最低賃金が上がれば、 同じ基準内に収まる労働時間は自動的に短くなります。 たとえば時給が上がった分だけ、年収130万円に達するまでの週の労働時間は減ります。 「時給が上がったのに、働ける時間が減る」という感覚の正体はここにあります。

逆に言えば、51人以上の勤務先では2026年10月1日以降、 加入判定に金額が使われなくなるため、この「時給が上がるほど時間を削る」構造は加入判定に関しては消えます。 自分の都道府県・時給・労働時間・勤務先の規模を入れると、 年収見込みがどのラインのどこに位置しているのか、 そして最低賃金が上がったときに何がどう動くのかを数字で確認できます。

出典

  • 地域別最低賃金の全国一覧(令和7年度・確定値) — 厚生労働省
  • 令和7年度地域別最低賃金全国一覧(PDF・全国加重平均1,121円) — 厚生労働省
  • 令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(令和8年7月28日 報道発表) — 厚生労働省
  • 令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申) — 中央最低賃金審議会
  • 令和8年度地域別最低賃金額答申(令和8年9月4日 報道発表・全国加重平均1,177円・発効は10月1日〜12月2日に順次) — 厚生労働省
  • 令和8年度 地域別最低賃金 答申状況(別紙PDF・47都道府県の答申額・引上げ額・発効日) — 厚生労働省
  • 短時間労働者の適用要件(週20時間・令和8年10月に賃金要件を撤廃予定の明記) — 日本年金機構
  • 厚生年金保険法施行令等の一部を改正する政令案(施行期日:令和8年10月1日) — 厚生労働省年金局年金課(e-Govパブリックコメント)

この結果は一般的な情報提供のための概算です。実際の金額は個別の事情や最新の制度により異なります。最終的な判断の前に、税理士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。本記事は作成時点の法令・公式資料に基づく一般的な情報提供であり、施行日・金額等は今後の政令・改正で変わる場合があります。